60代の少女

再び、アトリエで

「元博、お客さんだぞ」
アトリエの掃除をする元博を、そう言って師が呼び止めたのは、それから数日後のことだった。
振り返ると、アトリエの入口に、師と何度か見た顔が飛び込んでくる。
「こんにちは」
何度か見た顔―――いちは挨拶と同時に目元を緩めた。
元博は目を瞬きながら、軽く会釈する。
そういえば「顔出してくれ」「遊びに行く」みたいなやりとりもしたが、まさか本当に来るとは。
虚をつかれる、とは、まさに今のような状況に使うのだろう。
「お前が遊びに来いって言ったんだって?珍しいじゃねぇか」
茶化すような、四五六の声。
それに反応する気にもなれず、元博は首筋を軽く掻く。
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