60代の少女
妻の行き過ぎた世話好きが、たまに「おせっかい」になることを、40年連れ添った四五六はよく理解している。
元博は今回の新作に、最後のタイトルパネルを貼り付けた。
これで展示作業は粗方終わりということになる。
「ご苦労さん」
大して労う気のない師の声。
元博と四五六は、並んで新作の前に立った。
青い背景に四五六独特の荒い筆遣いで描かれた白い桜。
たまに混じる赤がアクセントになって、桜の白を際立たせている。
しかし真冬のこの時期に桜の絵とは―――。
「…季節はずれじゃないですか」
「…いいじゃねぇかよ、別に。描きたかったんだから」
自由すぎる師。
こういうところが反感を買いやすいが、生粋の画家気質であるとも言える。見習って良いのか、反面教師にするべきか。
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