60代の少女

故郷

翌日から、四五六の個展は始まった。
元博も裏方として色々と仕事をすることになり、ほとんどギャラリーに通い詰めの毎日だった。
来る人間は、ほとんどが美術関係の画家や雑誌の取材で、そのほかにも趣味の個人やファン等の対応も相まって、準備以上の繁忙を極めた。
そんな日が5日ばかり過ぎた、昼過ぎのこと。
「よう」
「…何しに来たんだ?」
「何しにって…作品見に来たに決まってんじゃねぇか」
受付に友人の珍しい顔を見つけて、元博は小さく嘆息した。
友人―――麟太郎は、そんな元博の顔を見ながら、にやにやと笑っている。
「別に邪魔しにきたわけじゃねぇんだから、んな顔すんなって。うちはほら、婆ちゃんも絵が好きだからよ。お前からチケットも買ったことだし」
そう言って麟太郎が視線を投げた先には、四五六と談笑する老婆の姿があった。
「特に笹本先生の絵は気に入っててな。今日は新作が初お披露目って言うんで、楽しみにしてたんだぜ」
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