liarain
嘘つきな僕に雨



天気は最悪。

途中で買った傘なんて役に立たない。

風もないのに斜めに降り注ぐ小雨が、さらさら顔に当たる。

それでも、一分一秒でも早くそこに着きたかった。

もしこの雨が彼女の心を反映しているのだとしたら……。



また、僕はきっと、嘘つきになる。





僕は無言で、傘を差し出した。

「大丈夫」

大丈夫じゃないくせに。

小刻みにカタカタ震えてるくせに、そんな強がりを言う。

たぶん、その震えは寒さのせいだけじゃないことだって、僕にはお見通しだ。

「とりあえず、受け取ってよ」

そこら辺のコンビニで買ったビニール傘を、僕は立ったまま、座り込んでいる彼女に突き付けた。

それでも彼女は首を横に振るだけで、一向に傘を受け取る素振りを見せない。
< 1 / 8 >

この作品をシェア

pagetop