liarain
僕は、そっと、彼女の肩に手を回し、震えが止まるようにさすった。

「優しくされると、泣きたくなる」

さっきから泣いてるくせに。

彼女の瞳と頬だけ、やけに当たる雨の量が多いから。

「じゃあ、泣けばいい」

彼女の右肩に回した右手にぐっと力を込めた。

だってそのために、僕は来たんだから。

一人じゃ泣けない彼女のために、僕はここに来た。

なんてね。

そんなふうに、言えたらいいのに。

「彼女のために」なんて嘘もいいところ。

彼女を受け止める役目を他の奴に盗られたくなかっただけ。

彼女の涙を他の奴に見せたくなかっただけ。

いや、もっと単純に、僕が会いたいから来た、結局はただそれだけ。
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