作り者
作り者
一 造り者(秘密)
                             作者  

「雛子の目って、可愛いよね。黒目が大きくてさぁ。いいなぁ・・。」
美恵子はそういうと、最後の一口のジュースを飲み干して、その場に伏せた。
「そんなことないよ。美恵子のが目は大きいし、キレイじゃん。羨ましいよ。ホントに。」
「なに言ってんのぉ。あーぁ・・・。ホントもっと可愛くなりたい。」
「うん、あたしも。」
ここ渋谷にあるオープンテラスの「ミウウェイ」は、最近出来たばかりだが、OLに人気の!とテレビや雑誌にも多く取り上げられている。そんなお店で、私たちは学生アルバイターをしているのだ。
 価格の割りには、種類豊富で果汁100%のジュース類、コーヒーも種類は豊富だし、紅茶だって中々だ。それに何といっても、お店で作られているシェフのセンスがキラキラしているケーキ。これが本当に美味しい。美味い。生クリームは甘すぎなく、かといって物足りなくなるようなものでもない。スポンジも、これだけでも食べたいくらいに味がしっかりしていて、かといって主張しすぎずに、丁度良い。フルーツも、ジュース同様、新鮮なものを使っているせいか、水水しくて、そこらへんのスーパーで売っているものなんかよりも遥にレベルが高い。それに加え、お店の作りが緑豊かな中に、木目がはっきり見える茶色というよりは黒に近いこげ茶色をした木のテーブルに椅子、壁もテーブルたちとお揃いで、統一感があり、落ち着きがある。そして、お店の中央には水が流れる小さな池。店員の着ているユニホームは、緑の中にある「花」を表すかのように、小花の散りばめられた、膝丈のワンピース。黄色、赤、オレンジ、と様々な小花が、あっちに散り、こっちに散りと、お店の中をいったりきたりしているわけだ。
「ね、あの人の服、雑誌で見た。確か、なんていうブランドだったけな・・」
美恵子は、そういうと、一つテーブルを挟んだ向かい側の、ピンクのスーツを着たセミロングヘアーの女性をじっと見つめていた。
「そんなに、見たら怪しまれるからやめなよ。」
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