ギア・ドール

「悪くない提案やな・・・。」


 心から思う。


「でも、今回は遠慮させてもらうわ・・・。」


 毛頭、出来るはずもない・・・。


 菫が命を落とし、アルクが全力を尽くした。エリアスが命を賭け、キラが帰りを待っている・・・。


 すべて、自分のために・・・。


 こんな矮小で、自分が何者かも分からないような自分ために・・・。


 どうして、逃げることができよう・・・・・・。


「そっか、残念だ。これでも、俺はけっこうお前のコトを気に入っているんだぜ・・・。」


 そんなこと、初耳だ。


「ありがとよ。」


「・・・・・・・・生きて・・・・帰ってここいよ。」


「ああ。」


 短い返事。


 海人は、それだけを口にすると、振り向き、右手を軽くふって、ジン爺さんの部屋を後にした・・・・・。


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