虹色パウダー


桜子は、後ろの方を歩いていたから、トボ助には聞こえていない。


でも、周りにいた生徒はクスクスと笑い出した。


「もしかして、アイツのあだ名?」


横を歩いていた男子生徒が、桜子に話しかけた。


「急に口に出してみたくなっただけ」


僕の歌、聞こえてたんだぁ。



僕はまた桜子の耳元で歌い始める。


姿は見えないし、声も聞こえないはずだけど、こういうことがあると嬉しいんだ。



僕の存在が、ちゃんと桜子に伝わっているように感じるんだ。



「トボ助かぁ」


また桜子は呟いた。


「ブハ!!お前面白すぎ!!」


「これからアイツのこと、トボ助って呼ぼうぜ」



男子が2人、振り向きながら桜子に向かって話しかけた。


桜子は、いいね~と言いながら笑った。



トボ助には悪いことをした。


今日からクラスの生徒の間では、トボ助ってあだ名が定着するだろう。




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