男性不妊と宣告されて~不妊治療闘想記~
そんなある日。
「綾子さんが妊娠したって……」
私を凹ませるニュースが入ってきたのはそれから間も無い頃だった。
綾子さんとは2ヶ月前に結婚したばかりの義姉さんの事である。
「早くない? ハネムーンベイビーって事?」
確かディズニー好きな綾子さん夫婦はつい最近アメリカのディズニーに行ったって言ってたっけ。
結婚したらすぐ妊娠……ね。
今度会ったらマトモに顔をみれる自信が私には無かった。
羨ましくない、訳が無い。
どうしよう……。
子供なんて作るもんじゃない。そう言っていたリュウジのお母さんは今一体どういう心境なんだろう?
聞けば妊婦になった綾子さんの為に身の回りの世話をしたり甲斐甲斐しく働いているらしい。
我慢できずに私は聞いてしまった。
「お母さん子供なんていない方がいいって言ってませんでしたっけ?」
出来るだけ嫌な言い方にならないよう、気をつけてもこれが限界。
「二人だけでいいと思ってたんだけどねぇ。出来ちゃったものはしょうがないし」
しょうがない、か。
ますますリュウジの家族と溝が出来たような気がした。
そして最後には
「二人で人生楽しみなさいね!」
いつもの言葉。
受け入れられるはずのない言葉。
大きなお腹の綾子さんを見たくなくて、この年私は妊娠中でバタバタしてたら悪いし……と理由をつけ、一度もリュウジの実家へは帰らなかった。
大晦日が予定日なのが幸いしただけなんだけど。
リュウジにとっては可愛い甥もしくは姪になるかもしれない。でも私はきっとそう思えない。
リュウジのいない日に、一人で私は泣いていた。