『アリガトウ』と言いたくて。

#05 誘惑

「あー疲れたっ!!」

私たちは,あの後六軒の店に寄り『買い物』をした。

「悠優超上手いね!アタシ以外にこんなデキる奴初めて見た!」

萌未はかなり上機嫌。

私は,結局何品もの服を万引きしてしまった。

そう言えば,久々の万引きだった。

少し…気持ちがすっきりした。

それに,萌未のペースに乗せられて,万引きを楽しむようになっている自分がいた。

「萌未こそ上手いよー!アタシ等ってさぁ…
いいナカマになれそうだね!?」

「万引きナカマ??」

「そーだね★」

「アタシの万引きナカマは悠優が第一号だよー!」

「アタシも萌未が最初★」


『また一緒に行こうね』

そう言って交換した連絡先。

私にとって

萌未は,特別な存在になっていた。

唯一の趣味である万引きを理解してくれる。

それだけで,萌未は私の全てを理解してくれたように感じた。


同時に,私の頭から消えかかっていたのは

『凌央』

という存在。



誘惑に負けた私に待っていたのは

自業自得の運命だった。
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