怪盗ブログ


暫くしてふすまが開き、あの写真の男、会沢藤五郎が入ってきた。

ロマンスグレーの髪はすっきりと整えられ、髭もきちんと剃られている。

眉間に刻まれた深い皺が、この人がどんな人が物語っていた。


「久しいな。愚息」


背の高いその人は、立ったまま、まるで見下したように言い放つ。


「よう、親父」


対する大貴も同じように返す。


無表情で交わされる挨拶にあたしは戸惑った。


「それから、内藤の娘か」


「お、お久しぶりです」


ぺこりと頭を下げる。


あたしが挨拶すると、会沢藤五郎は向かいのソファに腰かけた。

その動きが、話し方や態度からは想像しがたいほど、やけに上品で滑らかだった。

やはり、旧家の当主らしい、気品と貫禄がある。

……と、思う。
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