不良×依存症
「しばくって言われてもぉ。関西弁わかんないしぃ」
まるで、渋谷にいるような女子高生のあの独特の口調で喋る央に苛立ちはさらに増す。
「…ッ!央っ!?」
突然後ろから、驚きを隠せないような甲高い声が捺来を驚かせた。
捺来は央をおぶったまま、後ろを振り向いた。
そこには服装から見ておそらく、バスケ部員であろうと思われる身長が低い女子が立っていた。
多分この女子が先程の声の持ち主であろう。
彼女の視線は央から捺来へと変わり、目をパチクリとさせた。
その痛い視線に耐え切れず、捺来は目をそらし、少しお辞儀をする。
「…えっと。央の…彼氏さん…?」
小さい女子が、捺来をみては驚きを隠せないまま、首を横にかしげる。
央の「彼氏」という位置の人間だと思われた捺来は咄嗟の嘘を思いつく。
「いえ…違います。酔い潰れてたこの人を家まで送ろうとしているだけです。別に知り合いでもないですよ」
捺来は、嘘を顔に出すまいと必死で笑顔をつくる。
その笑顔に小さい女子が、真っ赤に染まっていくのが分かる。
「で、この人の家知らないですか?送りたいんですけど…。酔い潰れて寝てしまった様子なんです…」
「あ…っ、央の家は安西と酒巻しか知らないんですけど…っ。あ、酒巻部員じゃないから今いないし…。あっ、ちょっと待ってもらえますか?」
安西だか、酒巻だか海苔巻きだか知らないが、しびれている手を一刻も解放させたいのは山々なのだ。
「あっと…あ、あたし柊明菜と申しますけど…そちらは」
名前聞かれるほど面倒くさいものはない。
「別に名を名のる程の者じゃないですよ」