不良×依存症
「ちょ、なっちゃん!待って!話があるの!」
あたしが大声を出しても、なっちゃんは完全シカト。
やっぱりこの辺は、西高と東高のグラウンドから聞こえる部活生やうちらみたいな帰宅部がガヤガヤしてて聞こえないのかもしれない。
いや。
聞こえると、思うけど。
「クソッ。なっちゃん、ヤリ逃げかぁ!?」
あたしのとどめの一言で、なっちゃんは立ち止まる。
「はあ!?」
なっちゃんが顔を歪め、あたしにゆっくりと近づく。
「お前、何人聞きの悪い事言うとんねん!いつ、俺がヤリ逃げしてん!?」
なっちゃんは息を切らしながら、あたしに怒鳴る。
「…そうでもしないと、なっちゃん来ないでしょ」
「当たり前や!」
一週間ぶりに顔を合わせるあたしとなっちゃんは、別に何も変わることはなくまさに普通だった。
「あ、あのー…」
あたしとなっちゃんの間に飛び散る火花を消してくれたのは、青山さん。
「あ、この前の…。万引き犯」
なっちゃんがあまりにも無神経に言うもんだから、あたしはなっちゃんの頭を強く叩いた。
「…い、痛!」
「いや、工藤さん。いいって!事実なんだから」
青山さんが慌てて止めに入る。
「そうや!誰が警察に、怒鳴られた思ってん!?俺やぞ!」