SとNの法則


どうやらこの人もあのことを知っているらしい


きっと俺を思って五十嵐先輩が言ったんだろう、彼が実は誰よりも優しくて人を思ってるのをちゃんと知ってる


「…大丈夫ですよ、前みたいな馬鹿なことおきませんから」


「なら良かった」


「先輩が気にすることじゃないです、でもありがとうございます」


「どういたしましてって、ちょっと灘!やだそんな格好でこっち向かないでよ」


シャツのボタンを外しながら振り返って礼をすると俺を見て顔を真っ赤に染め視線を外した


先輩にも純粋なとこがあるのかなんて思いながらまた俺はロッカーに向き直りユニを着る


先輩はどうやらソファーを離れ俺を見ないようにドアの前へ移動したらしく少し声が遠くなった


「着替えるなら着替えるってそう言ってよ、びっくりしたんだから」


「もう大丈夫ですよ」


上も下も着替え終わったことをドアと睨めっこしてる先輩に伝えても中々こちらに振り返らない


ようやく恐る恐るこちらを見る先輩の顔は中々傑作だった


けど先輩はすぐに平常心を取り戻しまたどっしりとソファーに寝転んでいる


やっぱりこの人は中々帰ってくれないらしい


なんとも図太い神経を持っていらっしゃる


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