みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~

涙声でウチが言う。

「おう! おらん一樹んぶんまで、美佳はボクの守るけん、もし誰かにいじめられたりしたら、すぐにボクに言いないや」

「うん……」

ウチはそう言うと、まだあふれ続けている涙をハンカチで拭いた。


ホンマ……ホンマに一葉はどこまでオットコ前なんやろ?

彼女が男の子なら、ウチは間違いなく一葉に惚れてる。


神さまのイジワル!

各務兄妹をこの世に創造しはるとき、なんで一葉も男の子にしてくれへんやったん!!


このときウチは、彼女が男の子やったらよかったのに、と心の底から思うた。

“あ~ァ、どっかにいてへんかいな? 一葉みたいな男の子……”

そない思うた次の瞬間、オツムの中に彼女の双子の兄である各務一樹の顔が浮かんだ。

“おるねんな……身も心も男の子ヴァージョンの一葉が、ちゃんと、この世に……”

そうかて彼にはもう逢えへんし、逢えへん理由はウチ自身が作ってしもうた―――――
< 31 / 142 >

この作品をシェア

pagetop