スカイ・フラワー
千広の話し
千広は香が帰って行くのを見送った後、夏葉の居るリビングへと向かった。

「やったぁ。プリンー♪」

私はプリンを冷蔵庫に入れてから、ソファに座って『いいとも』を見始めた。

ガチャ。

千広が戻って来た。



千広は私の隣りに腰を下ろすと、クッションを抱きながら私に言った。

「夏葉ってプリン、好きだったんだね…」

「うん!」

「……。あ、午後は海辺のアクセサリーの店行くんだよね?」

「そう!雑誌にその店載ってたから行ってみたいの!」

「……そう」


私は浮かない顔をした千広に気付いた。

千広はとても繊細な心の持ち主だ。私がプリンを好きだという事を三枝が知っていたから千広はきっと疎外感を感じてしまったに違いない。



だって、千広は……




ーー…私と千広が、三枝と山地君に会った日の夜。

布団に寝転がり、電気を消そうとした時だった。


「夏葉…。あのね?」

千広は改まった姿勢で私に言った。

「その…私……三枝君が好きなの…」

その言葉を直に聞いた瞬間、私の胸がドクンッと鳴った。何でかは分からなかった。

でも、顔を赤らめて俯いている千広を静かに見守った。

本当は前から知ってた。千広はいつも三枝を見ていた。いつから好きだったんだろう…。

度々、千広が三枝の事をジッと見つめていたりしていたのに気付いていたし、三枝の事をちょくちょく聞いてくる事もあった。

だから、薄々は勘づいていた。

三枝と話す時は何処か恥ずかしそうだったけど、楽しそうでもあった。


私は敢えて、千広には聞こうとしなかった。

私の口から言ったら、きっと千広は余計に気を使うようになってしまうと思ったから…。
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