消された煙草


やがて頭痛が波が退くように去ると、私はもう一度目の前のドアノブに手を掛けた。


もう一回よく考えよう。何か思い出せるかもしれない。


ゆっくりとドアを引き、私は再び部屋に足を踏み入れた。


部屋の中は何も変わっていない、当然のことだが。


私は狭いキッチンに立ち、周りの物を見回した。
そして気付いた。


……このカップは、私のだ。この皿も、箸も。
しかし、こっちのカップは違う。グラスも見たことない…。


まるで自分の後から誰かが買い足したように、食器が増えている。


……あの、死んでいた女が?
私は彼女と一緒に暮らしていた?





< 24 / 40 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop