盲目の天使

『カルレイン様へ。

大変なお仕事でお疲れなのに、わざわざお手紙をくださり、ありがとうございます。

とても嬉しかったです。

私も早くカルレイン様にお会いしたいです。


でも、人は焦ると良くない結果を生みます。

どうかよく眠り、よく召し上がって、お体を大事になさってください。

お会いできる日を、心待ちにしております。

リリティス』



これは、オルメの字だな。

代筆したのか?



紙を最後まで広げると、オルメの言葉も書き足してある。


カルレインは、飛び上がって叫びだしたい衝動に駆られた。

あれだけ感じていた焦りが、瞬く間にとけて、痕跡すら残らなくなる。


「マーズレン。私は少し眠る。コウガイ将軍に、後を頼むと伝えてくれ」


「はい!」


空を見上げると、大きな月が中天にさしかかり、カルレインの足元を照らしていた。

気高く美しい月は、まるでリリティスそっくりに見える。


簡易の寝台に横になると、カルレインは、あっという間に夢の中に落ちた。



< 175 / 486 >

この作品をシェア

pagetop