盲目の天使

「では、これだけでも、お召し上がりください」


オルメは、カルレインの食事を置いて、一礼すると部屋を下がった。


プロンが死んでから、政務は、アルシオンとロキ大臣が執っている。


ノルバスの民には、王が死んだことはふせてあり、

王妃が、犯人として捕らえられていることも、また、内密にしてあった。


「兄上。リリティスの様子はいかがですか?」


アルシオンは、忙しい政務の合間を縫っては、こうしてリリティスの元へと通っている。


アルシオンの言葉に、カルレインは、力なく首を横に振って答えた。


「そうですか・・・」


お互い、睡眠不足と過労で、酷い顔をしている。

だが、忙しい分、自分の方が、幾分ましかもしれない、とアルシオンは思った。


忙しさにまぎれれば、嫌な事を考えなくてすむ。

リリティスの寝台の横に、ずっと座っているカルレインに比べれば、

動き回っている自分は、まだまだだ。


「王妃は、どうしている?」


アルシオンの肩が、ぴくりと揺れる。



< 361 / 486 >

この作品をシェア

pagetop