盲目の天使

「あの、ルシルさん」


「さんは、余計です。ルシルです」


リリティスの着替えを手伝いながら、ルシルは、リリティスの命が助かったことに感謝していた。

昨夜は、記憶がないことに取り乱してしまったが、こうして目まで見えるようになったし、

記憶だって、きっとすぐに戻るに違いない。


本人は、気づいてなかったが、楽天的な性格と切り替えの早さは、彼女の長所の一つであった。


「・・・ルシル。

その・・・・。

私は、カルレイン様と、恋人同士だったのでしょうか?」


ルシルは、はっとして、作業の手を止めた。


どう言って、説明すればいいのだろう。

二人が惹かれあっていたのは、間違いのない話だ。

だが、

ノルバスに、嫁すために、やってきたわけではない。


ルシルは、慎重に言葉を選んだ。


「お二人の間に、どのようなお話があったかは存じませんが。

リリティス様は、カルレイン様を深く愛していらっしゃいましたよ。

もちろん、カルレイン様も・・・」


きっと、全てがうまくいくようになりますよ--。

自分自身に言い聞かせるように、ルシルは、リリティスに笑いかけた。








< 402 / 486 >

この作品をシェア

pagetop