浮気心に春爛漫
「や」


屋上につくと、涼ちゃんがいつも通り右手を軽く挙げて、クスって笑った。




「久しぶり」

涼ちゃんの顔見たら、ほっとした。



今までもやもやしていたのに、


もやもやが解決したわけじゃないのに、


顔見たら、安心しちゃった。


好きになっちゃったのかもしれない。





でも


祐太がいるんだし。


封じ込めなきゃ。


「ちょっと話したいことがあって…さ…」




涼ちゃんには珍しく神妙な顔つきだな。


あたしはまた返事をする代わりに涼ちゃんをみた。





「彼女いるって聞いたんだって?」




「あ…うん。」



「話してなくてごめん。」






「…ううん。」


思わず目を逸らしちゃった。




”だから、ゴメン”


そんな風に言われるのが怖くて。




涼ちゃんの顔を見ることができなかった。




こんなに不安になるなんて自分でも少し驚いた。






そしたら涼ちゃんは、髪の毛を少しくしゃっとしてから、あたしの方を向き直った。







「…別れたから。」
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