スタンド・アローン
 翌日。

 劇団の打ち合わせで朝早くお袋は出て行ってしまい、親父と二人で軽く食事をとると、俺は北辰のガクランを来て海淵に向かう。

 歩くには少しばかり遠いので、大阪から持ってきた自転車に乗る。

「コケなや」

 親父が、出かけにいらんことを言う。

「アホ言うてんと、はよ行きぃや。遅刻すんで」

 笑いながら駅に向かう親父を見送り、俺もペダルをこぎ出す。

 大通を走ること30分、レンガ造りの塀が見えてくる。

 そのまま門を抜けようとすると、脇からの声に呼び止められた。

「門内では自転車を降りてください。あなた見掛けない顔ですね。進入許可証はお持ちですか」

 声のした方を見ると、ブリーチショートの生徒がいた。無論女子だ。

 グレーのブレザーが落ち着いた印象を与える、知的な美人だ。

「私は風紀委員長の神逆ルイです」
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