先生がくれたもの~運命に導かれて~


「悪い事は言わん。誰か他の人に頼め。日本にだって優秀な医者はいるだろ?」


「すいません。先輩。」


「純!」


「確かにオレは未熟だし、失敗したらどうなるかくらい分かります。だけど…瑠璃ちゃんはオレが治さないといけないんです。」


「だが、治るかどうかは」


「治らないとしても、オレじゃないといけないんです。」


「どういう意味だ?お前らしくない。いいか、ここで水無瀬瑠璃ちゃんが死んだらお前の将来無いんだぞ。」


「関係無いです。」


「何言ってるんだ?!それにお前が良くても他は、世界が困るんだよ。」


「でも!」


「さっき言った通り、お前は天才外科医だ。だからこそこれからが大事なのが分からないのか?お前はな、潰れちゃいけない人間なんだ。」


「だったら潰れません。」


「お前、まさかまだ時差ボケしてるのか?」


「違います。」


「なら!」


「もしオレが本当に天才外科医なら、オレは今回の事で潰れたりしませんよ。潰れたなら、オレはその程度の人間って事です。」


「純…」


「先輩がオレのこと心配してくれてるのは分かってるつもりです。だけどオレは、瑠璃ちゃんを助けるんです。他の誰でもなく、オレの手で。」


「分かったよ。」


「ありがとうございます。」


「だけどオレはお前がどうなろうと知らないからな。それだけは覚えとけ。」


「勿論です。」


「じゃあな。」


「失礼します。」


「潰れるなよ。」


「当たり前です。」


「そうか…じゃあな。」


そして電話は静かに切られた。


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