サラリーマン讃歌

~空見子の気持ち~

暫く人目も憚らず泣き続けていた俺だったが、二人は何も言わず、ただ俺が落ち着くのを待ってくれていた。

「……すまん。恥ずかしいところを見られたな」

漸く涙が止まった俺は、手の甲で乱暴に涙を拭うと、二人に恥ずかしそうに微笑んだ。

「ううん」

俺の顔を心配そうに覗き込みながら、梓は俺の手を握ってきた。

「ありがとう、サクくん」

「何が?」

「クミちゃんの為に泣いてくれて」

そう言って握った手に更に力を強く加えてきた。

その手を通して感謝と安らぎの気持ちが俺に伝わってきた。

その梓の優しさにまた目頭が熱くなってきた俺は、慌てながらもそっと手を外した。

「いや、感謝するのはこっちだ。ちゃんと話してくれて、ありがとう」

梓に視線を合わすと感謝の意を述べた。

だが、互いに泣き腫らした目を見詰め合わせると、急におかしくなって二人とも吹き出した。

「サクくん、目が真っ赤じゃん」

「お前もな」

「二人とも兎みたいですよ」

張り詰めていた糸が急に緩まり、三人は一頻り笑いあった。

笑い終えると、急に真顔に戻った久保が独り言の様に呟いた。

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