サラリーマン讃歌
Dear 梓

梓ごめんね。

この手紙を読んでる頃には、私はもういないと思う。

……この家を出て行こうと思うの。

色々心配かけたり、相談にのってもらったりしてたのに……ごめんね、何も言わずに出ていっちゃって。

梓にはホントにお世話になったのに……

ごめんね。




この前言ったよね、梓に。

あの事を父に知られたくないって。

でも、父に知られたみたい。

佐々木さんに聞かれたのかな?

佐々木さんってのは、お手伝いさんの名前なんだけどね。

梓に話をした二日後に突然父が部屋にやって来たの。

「どういう事だ!」って。

私は必死に誤魔化そうとした。

でも、父は「サク君」「体を強要された」「あの人が大好き」って云う言葉を繰り返し訊いてきたの。

それに十日以上学校休んでたしね。

誤魔化しきれなかった。

何か勘違いしてたしね、サクくんの事。

サクくんが体を強要した犯人だって思ってたみたい。

このままじゃ、サクくんに迷惑がかかると思ったの。

直情径行のあの父のことだから、絶対に何かすると思うし……

だから、私は河野の事を話したの。

< 159 / 202 >

この作品をシェア

pagetop