サラリーマン讃歌
空見子はホッとしたような安堵の表情を浮かべた。

「よし、だいぶよくなったから、あれ乗りに行こうか」

明らかに俺に付き合ってくれた空見子に悪いので、まだ若干フラつく頭を奮い起たせ、立ち上がるとスチールフェニックスを目で示した。

「ホントに大丈夫なの?」

「大丈夫、大丈夫」

笑顔を返すと、安心したように空見子も立ち上がる。

「あ、でも梓達待たないと……」

「大丈夫だって。彼奴らも二人きりの方が楽しめるだろ」

「でも……」

「さ、行こう」

俺は言い淀む空見子の手を取ると、強引に手を引いていく。

「ちょっ…」

俺に引っ張られる様に空見子も歩きだした。




「どこに行ってたのかな、クミちゃんは?」

スチールフェニックスに乗ったあと、合流した俺達に梓がニヤニヤしながら訊いてくる。

「俺が無理矢理あれに乗ろうって誘ったんだ」

空見子が答える前に、俺が素早く答えた。

「駄目だよ、サクくん。おじさんが女子高生を無理矢理誘ったら捕まっちゃうよ」

「はい、はい」

梓のペースに巻き込まれまいと、軽くいなす。

日が少し傾き始めているので、近くにあった時計に目を遣ると既に四時半を回っていた。

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