サラリーマン讃歌
その言葉に苦笑している、俺を見詰めたまま空見子が続ける。

「人をすごく安心させるんだよね、サクくんの雰囲気って」

「そりゃ言い過ぎだ。ただの三十越えたおじさんだよ」

なんか無償に恥ずかしくなってきた俺は、空見子の話を遮るように言った。

「梓ちゃんとは凄く仲がいいよね」

恥ずかしさを誤魔化すように急に話題を変えた。

「うん。大親友」

とびっきりの笑顔を見せた空見子を、チラッと横目で見た俺は胸をときめかせた。

(その笑顔は反則だよなあ)

空見子が梓との学校での生活などを話してくれているのだが、ドギマギしていた俺の耳にはあまり入ってこなかった。

暫く空見子の話に軽く相槌を打ちながら気持ちを落ち着かせていた。

「サクくんってどんな音楽聴くの?」

唐突に空見子が質問してきた。

俺は自分の携帯のアラームにも設定している四人組のバンドの名前を出すと、

「嘘!私もメチャメチャ好き!」

と興奮したように空見子が言う。

俺達はそこから一時間程、そのバンドの話題で盛り上がった。

「じゃ今度そのライブのDVD貸してやるよ」

「マジで。ありがとう」

そんな約束を交わすと、お互いのメールアドレスを交換した。

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