サラリーマン讃歌
そんな色々なギャップが彼女の魅力のひとつなのだろう。

俺達は買い物を終え、百貨店内にある喫茶店で休憩してるところだった。

「そう言えば、空見子ちゃんは兄弟いるの?」

「え?……うん、いるよ。兄が一人」

空見子は何故か気まずそうに目を伏せて、注文したリンゴジュースをストローで吸い込んだ。

「そっか。仲はいいの?」

「ううん、あんまり……」

「空見子ちゃんのお兄さんだから、男前なんだろうな」

空見子の整った顔を見ていると、お兄さんのイケ面ぶりが容易に想像出来た。

「どうなんだろう……わかんないや」

以前もそうだったが、空見子はあまり自分の過去や家族のことになると歯切れが悪くなる。

誰にでも触れられたくない領域はあるものだが、空見子は特に顕著だった。

ごく平凡な中流家庭に育った俺にしてみれば、空見子の家のような大金持ちは羨ましい限りなのだが……

小一時間ほど喫茶店で休憩した後、俺達は映画館へ向かった。

高嶋屋の向かい側にある映画館は最近リニューアルされたばかりで、新しくなってからはまだ一度も入ったことがなかった。

映画は俺が前から観たかった邦画を観ることにした。海上保安官を主人公にした物語の続編だ。

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