サラリーマン讃歌
高嶋はいきなり俺の腕を掴むと、強引に外に連れだした。

「マジで今日はしんどいんだ」

「お前の顔を見りゃわかるよ」

「だから今日は帰らしてくれ」

俺は両手を合わせて顔の前に突き出すと、拝む様に高嶋に言った。

「駄目だ。付き合え」

「頼むから!」

思わず強い口調になってしまった俺に、驚くでもなく高嶋は続けた。

「一人で抱えこんでも駄目な時は誰かに頼れ。そうしないと潰れちまう」

「俺は大丈夫だって!」

「そうは見えねえから言ってるんだよ!!」

それっきり何も言わず高嶋は歩いていくので、俺は仕方なく高嶋に連いていく。

いつもの居酒屋に無言で入っていく高嶋に、俺は溜め息をひとつついて、憂鬱な気持ちのままそれに倣う。

おやっさんは俺達の様子を見ていつものように絡んでくる事はせず、二階の座敷席を勧めた。

高嶋は席に着いて料理を頼んだ後は、何を訊いてくるでもなくプカプカと煙草を吸っているだけだった。

「久保が心配してたぞ」

頼んだウーロン茶と料理が全て運ばれてきてから、漸く高嶋が口を開いた。

「……そうか」

「鬼の様な顔をして仕事してるって」

「……そうか」

< 77 / 202 >

この作品をシェア

pagetop