サラリーマン讃歌
恥ずかしげもなくそう言ってくる高嶋に、俺が恥ずかしくなってきた。

「……フラれた」

そんな自分の気持ちを素直に伝えてくる高嶋に、若干心の棘がとれた俺は、ぽつりと告げた。

「……そうか」

「今回はマジできつい」

「そうか」

「初めてだよ、こんなに落ち込むのは。どう対処したらいいか、自分でも解んねえ」

「そうか」

高嶋は俺の目を見ながら、一回一回大きく頷いてくれていた。

「なんとなくだったけど、彼女も俺の事気に入ってくれてるような気がしたんだけどなあ」

「まだ好きなのか?」

優しい口調で高嶋が尋ねてくる。

「直ぐには心の整理がつかねえよ」

「そりゃそうだ」

高嶋は大袈裟に肩をすくめた。

「……でも、向こうも心の整理がついてねえみたいだぞ」

「え?」

言葉の意味が解らなかった。

「久保から聞いたんだが、クミちゃんだっけ?その子も今週ずっと休んでたみたいだぜ」

「なんで?」

高嶋の言葉に、思わず怪訝な表情になる。

「休んでる理由は、体調不良って事らしいけど……」

「けど?」

含みがある言い方をする高嶋に、鸚鵡返しに尋ねた。

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