ハピネス 〜女になった私〜



身勝手かもしれない。



だけど、ノブくんだけは、どうしても欲しい。



ずっとそばにいたい。



「うちは今まで子供達には、好きなように選ばせてきた。進学も就職も、反対した事は1度もない。子供の幸せを考えて後悔させんように、見守ってきた。」



落ち着いた口調と低い声。



みんながお父さんの話を真剣に聞く。



「ノブはもう子供じゃない。感情だけで簡単に考えて言ってるんじゃないって事は分かる。でもこの結婚は、親として、反対したい。」



初めてハッキリと出た“反対”という言葉。



目をギュッと閉じると、こらえていた涙がこぼれ落ちた。



「でも、一番に考えるのは、子供の幸せや。未希さんしかノブを幸せに出来ひんねやったら、未希さん以外の人はうちの嫁には相応しくない。」



お父さんの話は、一言も逃さない様に聞いていた。



聞いていたけど、頭がそれを理解するまでに少し時間がかかる。



「未希ちゃん・・・お母さんはな、未希ちゃんの事好きやで。ノブが選んだ人やもん、悪い子じゃないのは最初から分かっとった。未希ちゃんは可愛いし、素直やし、強い子や。」



お母さんがノブくんにティッシュの箱を差し出し、受け取ったノブくんが私の涙を拭いてくれる。



私の頭を撫でながら“だから大丈夫って言ったやろ”って、


そう言ったノブくんの目にも、涙が光る。



「安心してうちにお嫁にきなさい。」



お父さんの言葉に、お母さんも隣で頷いてくれる。



温かくて、優しい眼差し。



私は絶対にこの人達を裏切りたくない。


だって、ノブくんのお父さんとお母さんだから。



大切な人だから。



「ありがとうございます。・・・必ず・・・絶対幸せにしてみせます。本当に・・・ありがとうございますっ・・・」




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