7月7日、逢いたくて

【the sender】



事が動き出したのは
本格的に梅雨入りをした矢先の事だった。



「これ、宅配出来ますか?」



トン、と置かれた天球儀に顔を上げると
そこには絵に描いたような紳士な男の人が、あたしを見下ろしていて。

ミュージアムの商品を陳列していたあたしは
その背の高さに圧倒されながらも、慌てて接客に取り掛かった。


「あ、はい!出来ます!」

「じゃあ、お願いしていいですか?」

「では、こちらで受付致しますのでどうぞ!」


言いながらレジに誘導し
慣れた手付きで宅配用紙とペンを差し出す。

その人は、柔らかく微笑むと
「ありがとう。」と言ってボールペンを用紙へ走らせた。



一方のあたしは、じっと見てるのも失礼かと思い
彼が選んだ天球儀に視線を向ける。



天球儀とは簡単に言ってしまえば、地球儀のようなモノだ。


星や星座、天の赤道や黄道、時圏、等赤緯線などを描き表し

実際の天球での諸現象、例えば天体の出没や高度・方位などを読み取れるようにした装置。


主に、天文学に多く用いられるが
今プラネタリアンにもとても人気があるのだ。


あたしはペンを走らせる彼を一瞥し
気が付かれないように、遠目に彼を観察してみる。


…ぱっと見、天文学者には見えないし
おそらく、プラネタリアンではないだろう。

いや、もしかしたら熱狂的なプラネタリアンかもしれないが
品のあるグレーのスーツに、高級な腕時計。

明らかに、今まで訪れていた類の人とは違う。



…何、してる人なんだろう。






< 17 / 120 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop