純愛バトラー
「これでも茶には少々うるさいのだ。とは言え、出された茶に文句を言うような真似はしないがな」

 カップを置き、絵理は再び書き物を始める。

 ノートに視線を落としたまま、独り言のように絵理は言った。

「大事なものに想いを馳せるのは、大切な事だと私は思う。たとえそれが、痛みを伴うものであったとしても、な」


 どきりとした。


 オレに言っているのか。

 自分自身に言っているのか。

 それとも、ただの思考回路の暴走なのか。

 絵理の表情からは読み取れない。


 だけど、その言葉は。

 オレの内側にするりと入り込んで。

 心の蓋をぐらつかせた。
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