純愛バトラー
「消毒と止血はしておいた。
 原始的で荒っぽい方法だが、やらぬよりはましだ。後は保健室へ行き、適切な治療を受けるがいい」

「あ、ああ……」

 消毒か。消毒だよな。うん。
 他意はないよな。

「陣」

 それだけ言って、目を伏せる。

「私が原因で怪我をさせた……。
 本当に済まない」

 なんだよ。

 いつも堂々としていて、偉そうなくせに、何で泣きそうな顔してるんだよ。

「……お前のせいじゃない。泣くな」

 オレはそれだけ言うのがやっとで。

「馬鹿者。泣いてなどおらぬ。自分の不甲斐なさが腹立たしいだけだ」

 泣きそうに見えた絵理は、やっぱりいつもの絵理だった。
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