世界は変わる ー俺様の愛した男ー【BL】



顔を上げると、そこに立っていたのは……




見たことのない、男子生徒。


ゴツゴツした大きな手が、テニスボールを包み込んでいる。

奴はその手を、無言のまま俺の目の前に差し出した。


俺とそいつの身長差、約5センチ。




「……このボール、お前のだろう」


何も言わない俺に、奴が尋ねた。


凛とした、その声。

射抜くような、視線に……


俺は思わず、絡み合う視線を断ち切った。




俺と、奴の間に……

春にしては、少し冷たい風が吹き抜けた。




「…いらないなら、俺がもらっていくが」


奴は怪訝そうな顔で、俺を見ている。


無性に、苛立った俺は……

そんな奴の手から、乱暴にボールをもぎ取った。


突然のことに驚いたのか、奴は一瞬目を見開いたが……

何事もなかったように、元の表情に戻った。




『………気に食わねぇ』


なんでこの俺様が、庶民に“お前”などと言われなきゃなんねーんだ?


それに、こいつの目……

俺を見下しているようで、腹が立つ。




………………!!


まさか、こいつ………




「お前、名前は?」




.
< 12 / 43 >

この作品をシェア

pagetop