世界は変わる ー俺様の愛した男ー【BL】
ポトリ、と乾いた音を立てて机上に落ちた名刺。
奴はそれを手に取り、視界に映すと………
「……………!!」
何を思ったのか、驚いたように目を丸くした。
「なんだ?」
何か、マズいことが書いてあったのか?
……いや、そんなはずはない。
今奴に渡した名刺には、確かに俺の名前と、会社名しか……
――――――会社、名。
「榊、ゆい、と………?」
名刺に記載されている俺の名前を、小さく呟く。
………あぁ、そうか。
こいつが驚くのは、当たり前のことじゃないか。
俺としたことが、こんなことに気付かなかったなんて、どうかしてる。
いくら頭も見た目も良くても、奴は五万といる庶民の中の一人でしかない。
そんな庶民が、いきなり“あの”榊財閥の息子である俺を前にすれば。
………驚くのは、当然と言える。
「……ふっ」
自嘲気味な笑いが漏れる。
生まれて初めて、自分を馬鹿だと思った。
何を、苛々しているんだ?
俺は、こんな奴相手にペースを崩されるような人間じゃない。
コイツと俺は、別次元の人間。
――――住んでいる世界が、違うんだ。
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