戦国サイダー
ついこの間までは短い一人暮らしを満喫していたのだから、ひとりなのは平気だけど、ぼーっとするだけっていうのも勿体ない。



なんて思っていたら台所のテーブルに置いていた携帯電話からメロディが流れ出した。



……あの曲は。


取りたくないな、切らないかな、と思って茶の間でじっと身を潜めてみても『子犬のワルツ』は流れ続ける。



仕方なしに立ち上がって携帯電話を取りにゆく。


サブディスプレイには『高緑 由惟』の文字、いや着メロでわかってましたけれども。


まだ切れない着信に、渋々通話ボタンを押した。



「もしもし」


『……あ、思李? 今大丈夫か?』



一拍置いての質問に私はただ「うん」とだけ答える。



『あのさ……』



この間偶然会ったことを思い出す。


それで、今日は電話って……



なんとなく電話の向こうから遠慮のような雰囲気が伝わってきてしまって、戸惑う。


 
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