戦国サイダー
はぁ、もう……と温い空気を吸いこんでいると、袂がグラスに引っ掛かりそう、で時既に遅し。


カタン、という音と共に薄い青色のグラスがテーブルを転げ、残っていた麦茶と氷が飛び出してきた。


広がる麦茶は止まることを知らず、継虎さん、もうさんづけなんかしたくないけど、の方へと垂れる。



「大丈夫ですか?」



憎たらしいと心の底で思っているのに、何故こういうときって咄嗟にこの言葉が出るのだろう。


そうは思いながらも、お盆に載せていた布巾でテーブルを拭き、ティッシュを三枚ほど手にして渡す。



しっかりしてそうで、こういうところそそっかしいのか……と溜め息を漏らすと、小さな笑い声が聞こえた。



びっくり、この人笑うんだ。



「不思議だな、麦湯が冷たいとは」



……は? 麦湯?



「口にしたところ麦湯と味はさして変わらん。だがこれは冷たい。どうしてこのような飲み物があるのか。冷めただけか、ならなぜ氷が入っている。それに」


 

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