戦国サイダー
味噌汁を配膳しようと食器棚に向かう途中、足が止まってしまった。


でも言われてもぴんと来ない、実際目にしてないし。


再び歩き出すと、兄は茶の間へのガラス戸を開けて料理を運び出してくれた。



「あと、風呂は全てが初めて、って感じでさ。一から教えるのには苦労した」



ふーん、と相槌を打ちながらいつものお椀二つとお客様用を取り出して、わかめとなめこの味噌汁をよそう。


傷があることも、お風呂に慣れてないのも、別段過去から来た確証とは言えない気がするし。



「でもさ、だからって……」


「思李」


「わっ……へい!」



へい! ってなんだ私、江戸っ子かクリスマスか。


でも仕方がない、いきなり背後から名前呼ばれたら、びっくりする。


兄は前にいるし、声の主は鬼虎ときたら、そりゃもう殺されるかと思うぐらい。


 
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