戦国サイダー
今までどんな嫌な男に捕まろうが、情けない男に付きまとわれようが、自分で全部なんとかしてきたじゃないか。


そして過去は過去! 鬼虎なんかにキスされたからってなんだ!!



全裸でガッツポーズは、きっと傍から見たら滑稽だろうけど、ここはお風呂場、他に誰もいない。


「うし!」と気合を入れなおし、私は脱衣所へと扉を開けた。




諸々を終えて隣の台所へと直行すると、茶の間に二人の姿は見えなかった。


まだ夜九時、鬼虎はどうかはわからないけれど、兄はまだまだ寝る時間帯ではない。



どこだろう、と茶の間に入ってようやく縁側に二人の背中を発見する。



「虎さ、無理すんなよ?」



無理、ってなんの話?



その兄の声が、なんだか踏み込んじゃいけないような気がして、私は茶の間の端で足を止めた。


 
「何がだ」



答える鬼虎の声は特に変わりはない、低い、頭の中で響くようなよく通った声。


 
< 60 / 495 >

この作品をシェア

pagetop