嫌いな男 嫌いな女

大樹が美咲に告白する。

だからどうした。俺にどうしろっていうんだよ。どうしようもねえだろ。
自分の気持ちがわかったところで、大樹を止める権利だって俺にはない。


「お前、ほんとは……やっぱり美咲ちゃん好きなんじゃないのか?」


明宏の言葉に、俺はうまく言葉に出来なかった。
好きじゃない、とはっきり言えるほど、多分嫌いなわけじゃない、と思う。

だけど、好きだと言えないくらい、理由が見当たらない。


……ただ。
会いたいな、と思ってる。


風邪が治った美咲を見たい。ケンカしてもいいから、元気な姿を見れたらいいなと思う。


それに、多分。
今日のクラブは全く集中できないだろうなとも、思っている。
大樹から、結果を聞くまで、俺は気にしてしまうんだろう。





予想通り、クラブは散々だった。
パスを何回失敗したことか。顧問にも何度も怒られた。

自覚症状って、自覚することで悪化するってことなんじゃねえのってくらい、そわそわしっぱなしだ。
失敗する度に明宏がケタケタと笑うし、最悪だ。

何度も集中しようとしているのに、5分ももたねえんだから。


「あーもう最悪だ」

「いい加減素直になればいいのに」

「うっせーよ」


体育館を出て、ため息をこぼしながら校門に向かう。
ったく、やってらんねえよ。こんなの初めてだ。

ポケットに手を突っ込んで、携帯を確認する。チカチカと光っていたから、大樹からかと思ってビビったら、沙知絵からだった。
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