嫌いな男 嫌いな女


「あんたって、ほんっと、バカね」


ああ、バカですよ、わかってるよそんなこと。


「大人ぶって考えてるからそんなことになるのよ。昨日もなんかあったんだろうなーって思ったけど、帰ってきてこんなことになってるなんて。あんたこんなにバカだったの?」

「……うるせえな……」

「ガキはガキらしく思ったように、思ったままに行動すりゃあいいのよ、それを余計なことばっかり頭で考えるから、余計にドツボにハマって行くのよ」

「うっせーって!」


聞きたくねえよお説教なんて!
ふいっと顔をそむけると、——バシィっと背中を思い切り手のひらで叩かれた。


「いってーな! なにすんだよ!」

「人に当たり散らしてるんじゃないわよ! 自分のせいでしょうが!」

「わかってんだよ! そんなこと!」

「わかってるならなんnで女の子を傷つけるの!? 自分のしている行動に、自信があるの? あんたは! 自分が悪いくせに人に甘えてなんでもしていいとでも思ってるの? 何様なの?! 好きなら好きって言えばいいでしょうが!」


言えたら苦労しねえよ!
俺だって傷つけたくて傷つけてるわけじゃねえ。

いつだって……笑っていてほしいと思ってる。笑って俺と話してくれたらいいって思ってる。

沙知絵だって……あんなふうに傷つけたかったわけじゃねえ。


「美咲ちゃんも、あの子も、もっと痛かったと思うけど」

「……わかってるよ、わかってんだよ」

「巽はさ、自分で勝手に答えを出して、ただ単に怖がってるだけでしょ? 言わないなら言わないでいいけどね、言わない覚悟をしなさいよ。言わない覚悟もなく中途半端に気持ちを押し殺して、中途半端に態度に出して……人を傷つけるなんてバカよバカ」


その通りだ。
言い訳の一つも出てこねえよ。


「言わない覚悟も出来ないなら、言う覚悟しなさい。嫌われたくない、だけど好きだとも言えずにうっとうしいのよ、男のくせに」

「うるせえ」


わかってるんだよ。
渚のいうことが正しいってことも、わかってんだ。
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