嫌いな男 嫌いな女

「……帰る」

「え?」


私が怒ったのにわからない顔をして巽が驚いた顔をした。
自分の発言をちょっと考えろバカ!

無神経すぎる。無愛想で無神経でほんっと、最悪!


ぷいっとそっぽを向いて、入ってきた窓に手をかけた。


「ちょっと待てお前! 帰るなら勝手に帰っていいけど窓から帰んなよバカ女!」


窓から来たんだから窓から帰ったっていいでしょうが。
っていうか勝手に帰っていいけど!? バカ女!?


「うっさいな無神経男!」

「なんだそれ関係ねーだろ!」

「巽はほんっと無神経! バカで無神経でアホで変態でクソ男!」

「てめえだろうが! バカでガサツで頑固で口が悪くて短気なんだろ!」

「あんたに言われたくないわよ! 短気は巽でしょう!」

「お前は考えがたらなさすぎんだよ! 鈍感か! 単細胞!」


単細胞!? 巽のほうが単細胞でしょ。
考えなしに口が動いてんのはどっちだ!


「おいバカ待てって! おい、ガサツ女!」

「うるっさいな、ミジンコ!」

「ミジンコはお前だろ! あーもう勝手にしろ! ほんっとかわいくねえなお前は」

「巽にかわいいなんて思われなくていいし!」


ムカつく! ほんっとムカつく!
なんなのよ一体! なんでそんなこと言われなくちゃいけないわけ!?


「むかつくなあ!」

「お互い様だバーカ」


子供みたいに舌を出して、手でしっしと払われた。
くっそ……! いつまでもガキなんだから! 優しさの欠片もない。大人っぽい素振りもない。

こんなやつ、こんなやつ!

窓を乗りこえて、屋根を伝って自分の部屋に戻る。
振り返れば、まだ巽が私を見ていた。
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