嫌いな男 嫌いな女

付き合って半年以上。キス以上はない。これから俺はひとり暮らしするから、美咲が来ればもう我慢する気はない、とはいえそれも半年先のことだ。


無理だろ、無理無理。


こっそり部屋を出て、家の中に気配がないか確かめた。
渚が知らない間に帰ってきてるってこともありえるからな……。


「よし」


そう小さく呟いてもう一度美咲の隣に腰を下ろす。
あ、なんか緊張してきた。


「美咲」

「んー……」


美咲のバサバサの髪の毛に触れる。相変わらず剛毛で、真っ直ぐな髪の毛。
そっと顔にかかっている髪の毛を取り払い、頬をそっとなでた。


「ん、たつ、み?」


ふにゃっと笑って俺の名前を呼ぶ。
普段口を開けば文句ばかりのこいつが、俺の名前をそんな顔して呼ぶとか、反則だろう。

仕方ない! これは不可抗力だ! 美咲が悪い!

顔を近づけて、美咲の唇にそっと重ねた。
一回二回と重ねるごとに、深く。寝ぼけている美咲はなにも言わずにそれを受け止めつつ、たまに息を漏らす。

それが、余計に俺をその気にさせる、なんて絶対こいつは知らないだろう。


首筋にキスをして、ほんの少しだけ強く吸い付く。
ぴくっと美咲が震えたのは、痛かったからかもしれない。


やべえ、もう絶対止まらねえ。
まあ、いっか。
いいだろ。だって付き合ってるし。半年間紳士的な対応をしてきたんだし。もうすぐ離れるわけだし。その前に、ってのはおかしくないはずだ。


自分を何度も正当化して、ごくりとつばを飲み込んでから美咲の腰に手を回して。

するっと簡単に裾から手が中に入って、肌に触れる。
俺の肌とは違う柔らかさに、胸が締め付けられた。
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