嫌いな男 嫌いな女

「……なんだよ」


悠斗がいなくなったのに、家の前にいる美咲。
俺もなぜか動けなくて、ふたり無言で目を合わせた。


「……にやにやして、バカじゃないの?」


いつもの雰囲気で俺に悪態をつく美咲の声。
文句を言ってすぐに目をそらすくせに、家の中に入ろうとはしなかった。


「お前に関係ねえだろ。っていうかお前こそ悠斗とふたりで出かけて、浮かれてるんじゃねえの? いつものブス顔がもっとブス」

「な、あんたに関係ないでしょ」

「クラブ終わってからずーっと一緒だったんだろ? よかったじゃねえか。なに? 楽しかったわけ?」

「うっるさいなあ! ちょっとファーストフードで話してただけだし」

「へーお前みたいなのとなに話すの? 話できんの? 口の悪い女が」


ペラペラとバカにすると、美咲が珍しく口を閉ざし始める。
今にも泣き出しそうな顔をして俺を思い切り睨む。

……なんだよ。


「あんたのせいよ。あんたが悪いのよ」

「はあ?」

「どーせ、私と悠斗くんの会話なんてあんたのことばっかりよ! 聞きたくもないのに。こんなときまで邪魔しないでよ!」

「俺のせいじゃねえだろ!」

「うるさいチビ! なにあの人。デレデレデレデレして、きっしょくわるい!」

「うるせえな……おまえこそ猫かぶっててかっこわりーんだよ」


言った瞬間美咲は俺をものすごい目つきで睨んできた。
俺が悪いのかよ!?

先にケンカ売ってきたのはお前だろうが!


「あんなきれいな人に相手にされるわけないのに。なにあの顔。気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い」


なんでてめえにそんなことを言われるんだよ。
< 43 / 255 >

この作品をシェア

pagetop