嫌いな男 嫌いな女

「えーっと……みさ……き」

「もーいいわよ! 帰るわよ帰るわよ!! もう二度と絡まないわよ! 頼まれたってごめんよ!! ごめんね! 似合わない服着て!」


あわわわわわわ! 絶対殴りこんでくる! この勢いの美咲はやべえ! 絶対モノを振り回してくる!

思わずバッと腕を上げて、なにかを避けようとしたけれどなにも起きなかった。
恐る恐る腕を避けて、美咲を見ると、涙を目にいっぱいためながらも俺を睨みつける。

……やばい、泣く!? 泣くのか!?

ビクビクしながら美咲を見つめていると、美咲はくるりと振り返る。

あれ、な、なにもしないの?
いやされても困るんだけど……。

っていうか!


「ちょ! 待て美咲! 屋根から帰るな! 玄関から帰れ!」


慌てて美咲の肩を掴む。

屋根から帰るだけでも危ねえっつーのにそんなスカートで下をだれかが通ってたらどうするんだよ。
スカート履くならそれくらい気をつけろよ! それなりの行動っつーもんがあるだろうが!


「さわんな! 死ね!」

「……っぐへ!」


あ、目の前に星が見える。

顔面に飛んできた美咲の肘。俺の顔にめり込んだんじゃないかと思う。
っていうか鼻潰れたんじゃないだろうか……。

自分の顔を擦って鼻があることと鼻血が出ていないことを確かめてから美咲を見ると、さすがに焦った顔をしていた。


「ってーな……そんながさつだからブスなんだよ! もうちょっと大人しく出来ねえのかお前」


ほんっとこいつだけはどうしようもねえ。
口も悪い、顔も悪い、がさつだし手も早い。女だったら女らしくしとけよ!
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