わがままモデル王子は甘い香り
俺は身体だけは大人だった
だけど知識は乏しいし、精神的におかしい部分もたくさんあった

ここでは書けないけど
当時は相当、精神科医と家庭教師の頭を悩ませたらしい

そりゃそうだろう
7年近く世間から離れた生活をしていたんだ

異常な環境下で正常なわけがない

俺は必至だった

絶対に普通の人間になってやるって
本を読み漁った

寝ずに勉強もした

テレビを見て、同年代の男がどういったものか観察もした

そして見た目だけで仕事ができるモデルを姉貴に紹介してもらった

母親が死んで引き継いだ姉貴の会社で、モデルとして仕事をすることにしたんだ

もちろん世間の勉強は続けたさ

毎晩、母親の悪夢に悩まされた

それでもカメラの前だけは、俺は普通の人間でいられる

普通の男として、見てもらえる

それだけが俺の生き甲斐だった

何よりも俺は『普通』という言葉に憧れた
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