Mr.キューピッド

出逢い



春先の為に夜はまだ少し冷えるある日、2人の男が小さな公園で会話をしていた。

「直径5メートル。」
「何が?」
「お前が飛ばした看板の大きさだ。」

不衛生に見える無精髭に癖毛、そして体格と合ってないスーツを着た男に、清潔に見えるストレートで短い髪に、体格に合ったスーツを着た男が睨み付けながら話し掛ける。

「そして貴様の『シナリオ』のせいで人間が1人死んだ。」
「ほぉ?」
「……お前のせいで死んだんだぞ?」
「おう。災難だったな。」
「……ハァ。」

髪がストレートの男は無精髭の男の態度を見てため息を吐いた。
無精髭の男が問題を起こすのは毎度のことだったが、今回ばかりは『大』が付く程の問題の為、叱りざるを得ない。
面倒と思いながらも、男は無精髭の男に注意を促す。

「良いか滝本。貴様の仕事は人間の死に関わることではない。大体にして貴様の仕事で犠牲者が出るのはおかしいだろう?」

無精髭の男……『滝本』の胸ぐらを掴み、ギロリと睨む男。

「これ以上我々の仕事の邪魔をしてみろ。旧友だからと言っても次は容赦しない。」

滝本の胸ぐらから手を剥がすと、回れ右をして空へと跳んで、
消えた。

「おお怖い……」

滝本は元々ヨレヨレだったワイシャツを手で直すと、男が消えて行った方向をジッと見据える。

「仕方ないだろうよ……どこぞの誰かが風を起こさせたんだからよ。」

『俺は悪くない。』
そう呟くと、滝本は男と逆の方向を向いて、
消えた。


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