Mr.キューピッド

何回も何回も耳を澄ませた。
そして何度も心で叫んだ。
だけど、俺の言葉なんてやっぱり聞いては貰えずに、時間だけがどんどん過ぎてゆく。

(何で……)

どうして俺だけがこんなに虚しい思いをしてるの?

『―――――――』

単調に言葉を発してり人が近くにいてかなり気まずい。
だけど何故か体は軽い。そこが不思議。

(おお……)

おかげで少し動けるようになった。
一体この人は口から何を発しているんだろ?魔法の呪文的なやつかな?
『ちちんぷいぷい』的な。

『―――――――。――――――――――――――――――。』
(………ん?)

魔法の呪文と思われるものは終わってしまい、今度はざわざわとかいう人が動く音が耳に入ってきた。
何?今度は儀式でもやる気?

『―――――、』
『――――……――。』
(わっ……)

いろんな人の声が耳に入ってきて、俺の顔や首……いや、体全体に、くすぐったい何かをたくさん乗せてきた。
今度は何……動けない俺に対しての嫌がらせなの?

(……お?)

体全体にくすぐったい何かを乗せられた後は、瞼が開かないから何も見えないけれど何かに被せられたみたいで、射していた光がなくなって暗くなった。
……って、何で被せられてるの俺。
暫くすると、どこかへ移動するみたいで、今度はガラガラというタイヤが転がるような音が外でし始める。
そして、ガタガタッていう音がしたかと思うと、更に何かが閉まる音が聞こえてきて……暫くしてからこの場にクラクションが長く鳴り響く。
まるで霊柩車みたいだ。


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