続きは、社長室で。
私の存在なんて、やっぱり慰みでしかなくて。
あのメルセデスへ抱いた疑念も、容易く解けてしまった。
否応ナシに押し寄せるのは、どうしようもナイ焦燥感。
未来どころか、現在の足元すら揺らいでしまう。
第三者のように、笑みを浮かべたままの後藤社長。
隣席で笑顔を浮かべ、穏やかな素振りの婚約者。
2人の表情が似通っていて、恐怖心が募っていく・・・
「ねぇ、蘭さん・・・
どうして雅貴との結婚を渋っているのかしら?」
艶々の唇で紡いで、私を見据えて話す佳奈子さん。
「っ…、それは・・・」
グッと込み上げる“答え”を耐えかねていると。
「拓海の事を好きだから?」
「ッ――!」
尋ねておきながら、ズバリと答えを言い当てられた。
口に出すコトさえ憚られる、その言葉を・・・
「あら、それだと認めたのも同然よ?
貴方には、ひとつだけ言わせて貰うけれど…。
今さら断わろうだなんて、絶対に許さないから。
拓海の婚約者は貴方じゃない、この私なの――」
声を荒げる事もなく、あくまで冷静な彼女の言葉。
その態度がさらに、無力な私を打ちのめしていた。